2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第19話で登場した言葉――「あんじ」。
一見すると人名や地名のようにも見えるけれど、実は江戸時代の出版文化を語るうえで非常に重要なキーワードなんです。

聞き慣れない言葉だから気になるわ!
「それに、お前なら誰もやってねぇ『あんじ』を思いつくんじゃねぇかとも思ってよ」
この鱗形屋のメッセージには、どんな意味が込められているのでしょうか?
今回は、『べらぼう』の中で語られたセリフをもとに、「案思=あんじ」とは何か?
どんな文脈で使われたのか?
を、誰でも理解できるように世界一わかりやすく解説します!
最後までぜひご覧ください。


「あんじ(案思)」とは?江戸時代の出版用語
「あんじ」とは、漢字で書くと「案思」。
意味はズバリ、
です。
現代でいう「プロット」や「企画のタネ」に近く、江戸時代の出版業界では重要な用語でした。
作家が書く前に、編集者や出版人がこの“あんじ”を練って作品を形にしていく――そうしたやり取りが、当時の出版文化の根底にありました。
つまり「あんじ」は、単なる思いつきではなく、
- どんな物語を描くか
- 読者にどう響かせるか
- 世の中の流れにどう乗せるか
といった、出版人の知恵とセンスの結晶ともいえる存在なんです。


『べらぼう』第19話での「あんじ(案思)」の使われ方とその真意
第19話「鱗の置き土産」では、鱗形屋が、作家の恋川春町を「鶴屋からかっさらってくんねえか?」という伝言を息子の長兵衛から蔦重に伝えるシーンがあります。
その中で、こんなやりとりがありました。
長兵衛:「それに、お前なら誰もやってねぇ『案思』を思いつくんじゃねぇかって」蔦重:「誰もやってねぇ『案思』?」
朋誠堂喜三二:「ああ!案思!案思が土産なら・・・春町ってのはな、「誰もやってねえ」ことをやりたがんのよ。つまり、春町がどうしてもてめえで書きてえってなる、誰もやってねえ案思を土産に持ってけば・・・。」
長兵衛:先生に義理をかなぐり捨てさせるのは、それしかねえって親父も言ってました。
喜三二:おう!
蔦重:う~ん。じゃあ!「ひとつ俺と共に案思を考えて暮れの鐘」
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第19話より
ここでの「あんじ」は、
春町を動かすほどの魅力的な構想という意味。
鱗形屋は、春町が再び本気で作品を書けるようになるには、
「誰もやっていないような“あんじ”」を持ちかけることが必要だと考え、その役割を蔦重に託します。



つまりこの場面は、蔦重の編集者としての手腕を見抜いて、バトンを渡した鱗形屋のシーンでもありました。


文化を生むのは、”売れる”ことよりも面白い「あんじ(案思)」
春町は当初、蔦重のライバルである鶴屋に身を寄せます。
しかしそこは、完全な“売れる本主義”。創作意欲が湧かない環境でした。
一方で蔦重は、“未来(100年後)の江戸”を描くという破天荒な構想を練って春町に提案。
売上だけを求めるのではなく、世の中を動かすような構想=あんじが人の心を動かす。
このあんじ(案思)によって、
恋川春町は心を動かされ、蔦重の耕書堂に見事移籍することになったのです。


【まとめ】「あんじ(案思)」は江戸出版文化の核心
今回は、「べらぼうの「あんじ(案思)」とは?世界一わかりやすく解説!」という内容でお届けしました。
いかがでしたか?
・あんじ(案思)は、物語や作品の構想・アイデアの意味
- 「あんじ」は物語の“骨組み”であり“魂”。
- 蔦屋重三郎はそれを生み出す側として、作家の情熱を引き出していた。
- 今回の19話は、「本を作る」ことの本質を深く描いた回だった。



「あんじ」という一語から、作品づくりの奥深さ、そして蔦重という人物の魅力がぐっと伝わってきますね。
最後まで記事をお読み頂き、ありがとうございました!

